インサイト > 3 | プロフィットシェアに関して

執筆者
岡野 大SUSTEN代表取締役 最高経営責任者
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SUSTENは、プロフィットシェアという「完全成果報酬型」費用体系を採用しています。これは投資家の利益と運用会社の利益が同じ方向を向くように設計された新しい費用体系であり、一般的な資産運用サービスの費用体系とは異なります。この資料では、当社のプロフィットシェアに関する検証を行い、一般的な資産運用サービスとの比較を行っています。

一般的な資産運用サービスでは多くの場合、「固定報酬型」と呼ばれる費用体系が採用されており、預かり資産の残高に連動して例えば「年率1%」のような費用(運用会社から見た場合には報酬)が発生する仕組みになっています。固定報酬型は、運用資金の残高が増加するとともに運用会社の受け取る報酬額も増加するため、投資家との利益相反が起こりにくく、シンプルで分かりやすいことに特徴があります。当社も固定報酬型の費用体系は非常に合理的だと捉えるものの、一方でいくつかの課題もあると考えています。

固定報酬型の課題の1つ目は、投資家が損失を被っている間にも運用報酬が発生してしまう点です。リスクを取って投資を行う以上、資産価値は必ず上下に変動し、少なくない期間で損失が発生する可能性があります。いずれ長期的には利益が出ることが期待できたとしても、たとえば過去、国内株においてはバブルが崩壊して以降20年近く最高値を更新できず、外国株においてもリーマンショック以降は6年以上最高値まで回復することがありませんでした。固定報酬型の費用体系では、こうした最高値を更新できずにいる間もずっと費用が発生し続けてしまうため、投資家にはフラストレーションが蓄積し、長期投資から離反してしまう要因のひとつになってしまいます。

固定報酬型の課題の2つ目は、将来のリターンは不確実である一方で、費用だけは確実である点です。一般に、投資対象の期待リターンを推測することは大変困難を伴います。過去好調なリターンが出ていたからといって、それが将来も続いていくという保証はありません。たとえば、米国株式は市場全体として過去30年に渡って8%以上(米ドルベース)のリターンを上げてきましたが、このリターンの水準が今後も続くとは限りません。今後も株式市場全体がプラスの期待リターンを持つことは十分に想定されますが、各国の経済成長率や金利水準が歴史的最低水準を記録する中、株式の期待リターンが過去平均を維持できると想定するのはやや楽観的に思えます。期待リターンの推定に過去のリターンを直接的には用いないブラック・リターマン・モデルのような均衡期待リターンのアプローチにおいても、資産間の期待リターンの「比」は計算できますが、その絶対水準を推定することは恣意性を伴うという課題があります。

また仮に期待リターンを推測できたとして、将来の結果を正確に言い当てることは不可能です。これは例えばサイコロを想像してください。1から6の目が描かれたサイコロの出る目の期待値は3.5だということは分かりますが、次に振って出る目を正確に言い当てることは誰にもできません。(あくまで出る目を確率分布としてしか表現できません。) 各資産の期待リターンの推定には何かしらの恣意性が伴い、将来のリターンは不確実である一方で、費用の水準だけが確実に固定されているのはやや非合理ではないでしょうか。

固定報酬型の課題の3つ目は、金融商品を扱う販売会社や運用会社のインセンティブが必ずしも投資家と合致していない点です。預かり資産残高が増えると報酬が増える方式は一見、利益相反のない形に見えますが、顧客にとって『残高が増える≒運用成績が上がる』の関係が成り立っても、販売会社や運用会社にとっては『残高が増える≒運用成績が上がる + 顧客数が増える』の関係が成り立ちます。販売会社や運用会社にとっては、前者の運用成績を上げることよりも後者の顧客数を増やすことの方がはるかに容易で確実です。このため金融業者によっては、運用成績向上に主眼を置く投資商品よりも、顧客数を増やしやすく販売しやすい表面的な魅力を追求した商品(たとえば「テーマ投資」や「毎月分配」、「通貨選択型」のような投資商品)ばかりが開発されることになります。 このインセンティブの微妙な差異にはもうひとつの隠れた弊害があり、それは預かり資産が大きくなるにつれ、運用会社にかかる運用成績に対するプレッシャーが小さくなっていく点です。固定報酬型の費用体系では、運用会社はその成績に関わらず安定した収益を得られるため、ある程度預かり資産残高が大きくなった運用会社には、運用成績を向上させようというインセンティブが希薄になってしまいます。

SUSTENでは、これらの3つの課題を解決すべく、完全成果報酬型の費用体系を導入することにしました。 完全成果報酬型の費用体系を採用すると、次のような利点があります。

① 投資家にとって運用成績が過去最高を更新できずにいる間は、運用会社に支払う費用が発生しない。

② リターンに応じて負担する費用が変動するため、仮に将来、リターン水準が低下しても相応に費用も低下する。

③ 預かり資産残高の大きさを問わず、運用会社には常に運用成績に対するプレッシャーがかかり続ける。

これらの利点は、上記に挙げた固定報酬型の課題の多くを解決することができるため、投資家にとって合理的かつ理想的な費用体系といえます。 運用会社にとっては、固定報酬型のような安定収益源がなくなるというダウンサイドはありますが、運用成績を向上させればさせるほど、報酬が増加するというアップサイドも期待できるため、運用能力に自信がある会社にとっては投資家と運用会社の双方にとってメリットがあります。

ただし、気を付けないといけない側面がないわけではありません。 それは、成果報酬の持つ「利益の非対称性」です。

「利益の非対称性」とは、成果報酬型の費用体系では片や投資家に利益が生じた際に運用会社は報酬を受け取ることができるのに対し、片や投資家に損失が生じている際に運用会社は(報酬は得られないものの)実額的な損失を被ることはないということを指します。これは運用会社にとって、コールオプション(※1)を保有しているのと同様の効果を与えます。

※1 代表的な金融デリバティブで、資産をあらかじめ決められた価格で買える権利のこと。将来、資産価格があらかじめ決められた価格よりも上回っていれば権利を行使することで差額を利益とでき、下回っていれば権利を行使しないことで損失を免れる。

この「利益の非対称性」を利用すれば、期待リターンがない投資(結果は不確実だが、期待値として利益のない投資)であっても、運用会社に収益をもたらすことが可能になります。(※2) この性質があるため、一概に完全成果報酬型と言っても、手放しで喜べるものではありません。運用会社の持つ 「利益の非対称性」の価値(以下、オプション・プレミアムといいます)を評価して初めて固定報酬型と比較してリーズナブルな報酬体系かどうかがわかるのです。オプション・プレミアムの大きすぎるサービスでは、実質的に投資家が負うことになるコストが上昇し、投資家にとって不利益となります。

※2 期待リターンがない投資でも運用会社に収益をもたらすという点は、固定報酬型にも同様なことが言えるため、成果報酬型だけに限らない資産運用サービスに通じる一般的な課題。

では運用会社の持つオプション・プレミアムは、どのように評価したら良いでしょう。 実は、オプション・プレミアムは、投資行動の持つ「不確実性の大きさ」に強く関係することが実務的にも数学的にも知られています。不確実性の大きさは専門的にはボラティリティという、投資のリターンがどの程度ばらつきを持っているかの尺度をもって測ることができます。

成果報酬は、プラスになったときにその成果に連動した報酬が発生し、マイナスになったときにペナルティはないため、ボラティリティ(≒プラス・マイナスのばらつきの幅)が大きくなればなるほどプラス時に発生する報酬額も大きくなる、すなわちその期待値であるオプション・プレミアムも大きくなるのです。

成果報酬の料率を評価する上では、投資戦略の持つボラティリティを把握することが第一歩となります。幸いなことに、投資戦略の持つ期待リターンを推測することは大変困難であることとは対照的に、その不確実性の大きさに関してはある程度推測可能であることが知られています。

SUSTENの場合、投資家の収入や資産の状況、投資に対する考え方等に照らして、投資家ごとに適切と想定されるポートフォリオをご提案する仕組みになっていますが、その提案ポートフォリオは全9タイプ36種類存在し、それぞれのポートフォリオの持つボラティリティは以下の通りです。

<表1 SUSTENの提供するポートフォリオ・タイプの想定ボラティリティ>
(当社推定値、2021年1月現在)
ポートフォリオのタイプ 年率ボラティリティ(円ベース)
信頼の世界経済タイプ 14.7%
不易流行タイプ 10.9%
ヘッジファンドタイプ 10.2%
理想追求タイプ 8.8%
伝統的理論タイプ 8.2%
モダニストタイプ 7.7%
機動的守備タイプ 5.6%
安定バランスタイプ 5.0%
質実剛健タイプ 3.4%

なおご参考までに、代表的な投資対象に対して当社が想定しているボラティリティは以下の通りです。

<表2 代表的な資産クラスの持つボラティリティ>
資産クラス 年率ボラティリティ(円ベース)
株式の個別銘柄投資 15% - 60%
米国株式の市場平均(為替ヘッジなし) 23%
国内株式の市場平均 22%
外国為替(米ドル/円) 10%
日本国債 3%
銀行預金 0%

これらの前提の下、当社のプロフィットシェアの持つオプション・プレミアムを実際に評価してみましょう。

一般に、1期間のオプションに関してはブラックショールズ方程式(※3) と呼ばれる解析的な評価式が利用できますが、当社のような多期間のオプションの持つ価値に関しては、モンテカルロ・シミュレーション(※4)と呼ばれるシミュレーション評価が有効です。

ここでいう1期間とは、成果の判定が期間中1回しかなく、成果の基準もその都度リセットされるものを指し、多期間とは一定の期日ごとに成果を判定するものの、その成果の基準が翌期に引き継がれるものを指します。当社のプロフィットシェアでは、投資家の投資評価額が過去最高評価額を超過しているかどうかを毎月判定しますが、基準となる過去最高評価額については翌期にも引き継がれるため(つまり単月の成績で成果を測るわけではなく、サービス利用開始来の成果を常に基準とします)、多期間の構造を持ちます。

※3 金融デリバティブの価値を評価する方程式
※4 無数の乱数を発生させ統計的な期待値を評価するシミュレーション


まずは、当社の代表的なポートフォリオに関して、そのオプション・プレミアムが従来の固定報酬型と比較してどの程度であるかを評価します。

評価の方法は、モンテカルロ・シミュレーションを行い、運用会社の持つオプション・プレミアムの大きさを従来型の固定報酬(年率表記)に換算して行います。シミュレーションでは、リスク中立の前提(金融商品の評価に用いられる原則で、裁定機会が存在しないという前提)の下、無数の投資成果をランダムに生成し、それぞれの投資成果に対して当社の費用体系を適用した場合と、費用が一切発生しない場合とを比較し、その年率リターンの差分を抽出します。

評価する代表的なポートフォリオには、まずSUSTENが提供するポートフォリオの中で最もボラティリティが高い(=オプション・プレミアムが大きくなる)と想定される「信頼の世界経済タイプ」のポートフォリオを選択した上で、成果報酬の料率に関しても最も高い料率を使用しました。結果を表3に示します。

<表3 信頼の世界経済タイプの評価>
長期想定ボラティリティ:年率14.7% プロフィットシェア料率:1/6(=成果の1/6が運用報酬) 投資期間:5年/10年/15年/20年 試行回数:10,000回
投資期間 5年 10年 15年 20年
年率換算後のオプション・プレミアム 0.73% 0.49% 0.39% 0.33%

一般的な固定報酬型の費用体系を持つ投資信託の平均費用は年率1.4%程度であり、昨今普及してきたロボットアドバイザーが年率1.0%程度であることを鑑みると、当社サービスの年率換算したオプション・プレミアムの大きさはそれらを下回っていることがわかります。

またシミュレーション結果から分かるように、投資期間が長期になればなるほど、運用会社の年率換算後のオプション・プレミアムは低減していきます。これは数学的な観点では、年率換算前のオプション・プレミアムは時間(投資期間)に対して上に凸かつ単調増加の関数となるのに対し、時間で割る年率換算したオプション・プレミアムは下に凸かつ単調減少の式となるためです。長期の投資期間を前提とした場合、当社のサービスの持つオプション・プレミアムは、一般的なパッシブ投資の固定報酬率(0.1-0.5%程度)に匹敵する水準であることが分かります。

続いて、比較的短期の投資期間(5年)を前提に、当社の提供するポートフォリオをタイプ別に評価します。各タイプのボラティリティの前提は前述の通りです。 当社では、預かり資産の大きさや積立投資の有無に応じてプロフィットシェア料率を段階的に割り引くプログラムをご用意していますので、各料率ごとに評価を行いました。結果を表4に示します。

<表4 年率換算したオプション・プレミアム タイプ/料率別>
投資期間:5年 試行回数:各10,000回
ポートフォリオのタイプ 料率 1/6 料率 1/7 料率 1/8 料率 1/9
信頼の世界経済タイプ 0.73% 0.61% 0.53% 0.47%
不易流行タイプ 0.56% 0.47% 0.40% 0.36%
ヘッジファンドタイプ 0.50% 0.44% 0.39% 0.34%
理想追求タイプ 0.45% 0.38% 0.33% 0.30%
伝統的理論タイプ 0.42% 0.36% 0.31% 0.28%
モダニストタイプ 0.40% 0.34% 0.30% 0.27%
機動的守備タイプ 0.29% 0.25% 0.22% 0.20%
安定バランスタイプ 0.26% 0.23% 0.20% 0.17%
質実剛健タイプ 0.18% 0.16% 0.13% 0.12%

想定された通り、オプション・プレミアムの大きさはポートフォリオの変動リスクの大きさに応じて異なるのが見て取れます。また、プロフィットシェア料率が低下していくと、その分オプション・プレミアムも低下していくことが分かります。 上記のテーブルは投資期間を比較的短期の5年と設定していますが、より長期の投資期間を設定することで、表3で示された通りオプション・プレミアムの年率換算価値はより低減していくことも期待されます。

これらのシミュレーション結果から、当社のプロフィットシェア(完全成果報酬型)の費用体系は、固定報酬型の定性的な課題を解決する可能性が高いだけではなく、定量的な観点においても、従来型サービスの持つ固定報酬と比較して魅力的であるということが分かりました。

この資料においては、当社のプロフィットシェアに関する検証を行い、一般的な資産運用サービスとの比較を行いましたが、今後も当社においては、より投資家にとって理想的かつ投資家・運用会社の双方が持続的に投資を続けていける仕組みを研究していきます。

この資料で計算されているオプション・プレミアムは、リスク中立という前提(金融商品の評価に用いられる原則で、裁定機会が存在しないという前提)の下、運用会社が持つと推定される「非対称な利益」の合理的な価値を計算したものであり、投資家が負担することになる実際の費用ではありません。投資家が負担する実際の費用は、将来のリターンの大きさ及び適用される成果報酬料率に依存します。
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