パッシブリスクのレシピ
SUSTENは、「日本の資産運用サービスの高コスト体質を改善したい」、「個人投資家にはこれまで提供されてこなかった専門的な運用戦略もリーズナブルな費用体系で提供したい」というコンセプトでサービスが作られています。
このコンセプトを実現するために、固定の運用報酬を無くし個人レベルの運用成果に基づいて報酬をいただく方式を日本で初めて採用しています。これにより従来の資産運用サービスと比較して、よりリーズナブルで魅力的なサービスを実現しました。
国内大手の海外複合資産に投資する投資信託と比較すると、SUSTENにおける投資家の費用負担率はほとんどパッシブ・ファンド並みの水準であることがわかります。(図1)
出所:金融庁「資産運用業高度化プログレスレポート 2020」P.12
一方で、ご経験を積まれた投資家の方にとっては、SUSTENのサービスを利用しつつさらにご自身のポートフォリオに係る総合的な費用を下げる方法もあります。それは、パッシブリスクの部分に対するご自身による投資判断および管理です。
パッシブリスクとは、運用会社の独自性に依存しない(どの運用会社を選んでも同じ)、共通した市場リスクのことを指します。SUSTENでは、資産運用の基本に必要なパッシブリスクへの投資を含めた、すべてをお任せいただける「オールインワン」の資産運用サービスを提供していますが、ポートフォリオの投資判断のすべてを運用会社に任せず、一部を証券会社等でご自身で運用することで、(少しの面倒と引き換えに)さらにコストを抑えて活用をすることもできます。
具体的には、SUSTENが構築するポートフォリオのうち、運用会社の独自性の出ないパッシブリスクと運用会社の独自性が詰め込まれたアクティブリスクとを切り分け、パッシブリスクの部分(ETFへの投資部分)に関してはご自身で投資判断を行う方法があります。これは昨今、「インデックス投資」と呼ばれている投資手法で実現することができます。
インデックス投資の魅力は、その圧倒的なコストの低さです。最近では、(ほとんど無視できる)低い水準の運用報酬で投資ができるETFがあり、それらを活用して投資を行えば、運用会社に管理を任せずとも同じ投資効果を低コストに享受できます。デメリットは、使い方や管理を誤ると投資家にとって不必要なリスクを抱えてしまい低コストの魅力を消してしまいがちであることが挙げられますが、それでも投資家のポートフォリオのコアな部分を構築するには有効な手法といえます。
SUSTENにおいては、投資家のタイプによっては投資資金に占めるETF比率の高いポートフォリオを提供していますが、これらETFへの投資はSUSTENを通じて行わなくても個人でより低コストに複製することが可能です。この資料ではパッシブリスクをご自身で管理して、徹底的にコスト削減することを追求するために必要な手順をご紹介します。
本資料に記載されている個別銘柄等は、あくまで例示をもって理解を深めていただくためのものであり、いかなる個別銘柄の売買、ポートフォリオの構築、投資戦略の採用等の行為を推奨するものではありません。本資料に含まれている個別銘柄等の記載は、情報提供を目的として本資料作成時点での当社の見解を示すものであり、それらの将来の動きを予測あるいは保証するものではありません。本資料に記載されている手法を採用することによって発生しうるいかなる損失に対しても責任は負いません。
徹底的に低コストを追求する5つのステップ
ステップ 1
まず初めに考えるべきは、投資家が目標ポートフォリオを実現するために、ETFに投資することで複製できる部分がどの程度あるかを把握することです。
SUSTENでは、投資家の収入、貯蓄、生活スタイル、投資期間、目的、性格等を元に簡易的なコンサルティング(※1)を行い、投資家にとって理想的なリスク許容度およびパッシブ/アクティブ比率を推定しています。理想的には、この推定部分までご自身で精緻に検討してみても良いと思いますが、いったんはSUSTENの簡易コンサルティングの結果を活用してみましょう。
※1 SUSTENでは将来的に、より詳細にコンサルティングできるような機能を研究中です。
現在SUSTENにて提供している9タイプのポートフォリオのうち、内部でETFに投資する金額の比率は以下の通りです。(2021年1月現在)
この中で、特に株式系ETFの占める割合の高い 「信頼の世界経済」タイプは、ご自身で運用管理することによるコストメリットが高いタイプのポートフォリオといえます。(ETFへの投資比率が高くとも、株式系ETFへの投資割合が50%を超えないポートフォリオであれば、本資料で紹介する方法によるコストメリットはさほど大きくはありません。)
ステップ 2
次に行うべきは、投資対象ETFの選定です。ETFの種類は世界で4000種類以上と言われ、パッシブ型に限らずその種類は非常に多岐にわたります。本資料の目的である、パッシブリスクの複製という観点においては、ETFを選定する際に注意すべき点は、次の4点があげられます。
浮動株加重ポートフォリオであること。
費用が安いこと。
投資対象が網羅的で、恣意的な選択ではないこと。
裁定取引が発揮されること。
流動性が高いこと。
本当の意味での(狭義の)パッシブ投資、世界の投資家の集合知で形成された「市場ポートフォリオ」への投資を実現するには、特定の国や地域、資産クラスに限定せず網羅的に投資ができるものが理想です。また日経平均やダウ平均あるいはS&P500といった、選定委員が恣意的に投資銘柄を選定するような指数に連動するものも「市場ポートフォリオ」を実現するという観点からは適していません。
SUSTENのサービスのパッシブリスクは、上記の条件を考慮して、概ね以下のETFへの投資によって複製することができます。(2021年1月現在)
VANGUARD TOTAL STOCK MARKET ETF (VTI)
VANGUARD FTSE EMERGING MARKETS ETF (VWO)
VANGUARD FTSE DEVELOPED MARKETS ETF (VEA)
SPDR BLOOMBERG BARCLAYS HIGH YIELD BOND ETF (JNK)
VANGUARD TOTAL BOND MARKET ETF (BND)
VANGUARD TOTAL INTERNATIONAL BOND ETF (BNDX)
ステップ 3
パッシブリスクを複製するために、それぞれのETFの配分比率を計算します。
SUSTENの各タイプにおけるETFへの基本投資配分は概ね以下の通りです。(2021年1月現在)
ステップ 4
為替リスクをコントロールします。
外国為替に関しては株式投資や債券投資よりも身近であるためか、一般的にそのリスクが軽視されていたり、あるいは為替ヘッジに対する誤解が大きかったりする分野です。
代表的な誤解には、例えば以下のような考え方があります。
1 為替レートはボックスレンジで動くので、ドルコスト平均法を用いれば特に意識する必要はない。
2 為替リスクをヘッジするには、コストが掛かるので避けるべき。
3 日本で生活するならば、為替リスクは完全にヘッジすべき。
まず1点目に関しては、為替がボックスレンジで変動する保証はどこにもありません。ましてやドルコスト平均法でそのリスクが取り除けるわけでもありません。
2点目に関しては、為替ヘッジを行うと、通貨間の短期金利差がマイナスに効いたりプラスに効いたりするため「ヘッジコスト」や「ヘッジプレミアム」と表現することがありますが、経済合理的に考えられる(日本円ベースの)期待リターンの世界においては、その金利差はコストでもプレミアムでもありません。
3点目は、この資料内で簡単に説明することは難しいですが、金融市場が均衡状態(市場が概ね効率的)であれば、完全に為替リスクをヘッジすることは(あるいは完全にリスクヘッジしないことも)最適とは言えません。投資対象資産と為替のそれぞれの変動のリスク、またそれらの相関関係から得られる結論としては、日本で生活する投資家は(為替に特定の見通しを持たない限り)外国債券投資においては概ね100% ヘッジを行うことが最適ですが、外国株式投資においては75%程度の為替リスクをヘッジすることが望ましいと算出されます。(2021年1月現在)
為替ヘッジの有無が(経済合理的な世界では)期待リターンに影響を与えないにも関わらず、ヘッジ比率に100%や0%ではない「最適ヘッジ比率」が存在することはやや直観に反するかもしれませんが、これが分散投資の魅力でもあります。もしこの為替ヘッジを行わないとすると、ポートフォリオには投資家にとって不必要な変動リスクが残存することになり、それは見えない形でコストとして影響を与えます。(この不必要な変動リスクがポートフォリオに与える影響はまた別の資料で紹介予定です。)
為替ヘッジを検討する上で、その最適ヘッジ比率の計算がやや難しいということ以外に、もうひとつ難しい点があります。それは日本から見た外国為替の変動リスクをヘッジをしたETFの種類が限られている点です。また存在したとしても、為替リスクをヘッジしていないETFと比較して信託報酬が高く設定されている、若しくは上述した条件のいずれかの項目が満たせないケースが大半なため、せっかくの低コストETFの魅力が損なわれてしまいます。
とことん低コストを追求して為替リスクをヘッジするには、証券会社におけるETF取引とは別にFX会社を活用して為替のポジションを構築することも考えられます。最適為替ヘッジ比率から、ヘッジする必要のある投資金額の総額を計算し、それを実現するためのFX取引をご自身で実行する方法です。なお、この際に取引の頻度に応じてレバレッジは、ポジション管理を数週間・数か月単位で放置をする場合、より低いレバレッジ(最大で2~3倍程度)に留めるべきでしょう。
現実的には、ETF取引とFX取引を並走させるのは管理コストを増大させるため、そもそもSUSTENのようにETFを用いず、同様の投資対象に為替リスクをヘッジして投資している国内籍のパッシブ型投資信託を活用する選択肢も良いかもしれません。一般的にETFよりは信託報酬が高くはなってしまいますが、それでも費用水準は低廉に抑えられていますし、変動リスクの減少率を考慮すればメリットの方が大きい場合もあります。
ステップ 5
上記までに構築したポートフォリオを日々、モニタリングします。パッシブ投資の利点の一つは、投資対象資産のリバランスの頻度はそれほど必要ない点です。浮動株比率で構成されたETFを選択しておけば、おのずとパッシブ投資比率は長期にわたって自動的に維持されることになり、投資家のリスク許容度や投資目的に変化がない限りETF間のリバランスはそれほど必要ではありません。一方で、為替ヘッジに関しては、定期的にヘッジ比率を計算し、適宜ポジションを調整することが要求されます。
また投資家が直接複数のETFを保有する場合、一部売却やETFのリバランス、配当の再投資、為替ヘッジの調整があった場合、その取引ごとに税効果を都度最適化する必要があります。「損出し」や「益出し」と呼ばれるこの作業は、少々面倒かもしれませんが、信託報酬以上にポートフォリオにコストを生じさせる可能性があり、無視することができません。
まとめ
以上が、徹底的に低コストを追求してSUSTENを利用する際に必要なステップのご紹介です。SUSTENでは、自社が設定・運用をするゼロコストの国内籍投資信託(※2)を通じて、上記の投資プロセスを自動的に管理及び実行しています。投資信託の仕組みを活用するため、個人で直接ETFに投資するよりも税メリットが高く、また為替ヘッジに関しても資金効率の高い運用が可能ですが、この部分をSUSTENにお任せされずご自身で実行することで、より低コストな運用を追求できる可能性があります。
※2 運用会社や販売会社に支払う報酬はありませんが、資産を保管する信託銀行や投資対象のETFに発生する経費等は発生します。
とはいえ、これらのステップを全てご自身で管理することは、忙しい投資家の方にとっては現実的ではないかもしれません。仮にこれらのステップをご自身で管理せず、すべてSUSTENにお任せしていただいても、私たちのサービスは図1に示しました通り国内大手運用会社のパッシブ型投資信託並みの費用水準でご利用いただけますので、過度にご心配していただかなくとも良いかと思います。
SUSTENでは、今後もより投資家にとって魅力的であることを目指して、サービスの品質向上を図っていきます。
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